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COVID-19(新型コロナ肺炎)の経済への影響【中編】世界の金融市場に激震!?

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3-1. 中国の景気減速による影響

SARSのころと比べると、中国のGDPは、世界の7%だったのが16%へと拡大し、輸入金額でみても5%から11%へとシェアを大幅に広げています。中国経済の世界のなかでの存在感が格段に高まっているので、今回の新型肺炎の世界経済への影響は、SARSのころよりずっと大きくなるのは確実です。

中国の経済状況が世界へ波及する経路としてまず挙げられるのは貿易を通じたルートです。中国の景気が悪化すれば中国の輸入が落込み、中国へ輸出をしている国の経済が打撃を受けます。

局所的な、ショックが貿易を通じて世界にどう伝播するかを予測するのに使用されるGVARモデルによると、中国のGDPの伸びが1%下振れすると世界のGDPの伸びは0.23%押し下げられると推計されます。

前編の、第2章では新型肺炎による民間消費の落込みにより2020年の中国のGDP成長率は3.4%になると計算しました。もともと中国のGDPは6%程度の伸びによると予想されていたので、それを2.6%したぶれることになります。2.6に0.23をかけると、世界全体では約0.6%GDP成長率が押し下げられるという結果がでます。

ASEAN諸国や資源輸出国など、経済が中国への輸出に依存する度合いの強い国々は、より大きな悪影響を受けることになります。

一方で、アメリカのようにその国の経済規模に対して中国への輸出額が小さい国は、中国の輸入、減少による影響をあまり受けません。

GVAR、モデルによれば中国のGDP成長率が1%下がった場合にアメリカが受ける影響はわずかに0.07%であり、中国経済が2.6%減速してもアメリカは0.2%弱の影響しか受けないということになります。新型肺炎、大流行のさなかにあってもアメリカの株価は高値圏にありますが、アメリカ経済にとって中国への輸出の重要性が低いということがその背景にあるのです。

ちなみにEUは、アメリカに比べれば中国への輸出への依存度が高いのですが、ASEANなどに比べればずっと低く、中国の輸入減少によって経済が受けるインパクトは大きくはないといえます。

3-2. サプライチェーン分断による影響

アメリカの、中国からの輸入は中国への輸出の4倍もあり、アメリカ経済にとっては中国へ売ることよりも中国から買うことの方がはるかに重要な問題だということができます。

中国では工場の操業停止が、相次いでいますが、そのため中国からの部品の供給に滞りが生じており、このサプライチェーンの滞りが長期化すれば、アメリカの製造業も生産停止を余儀なくされます。

2月17日、アップル社は新型肺炎の流行が中国での生産と需要の両方に影響を与えており2020年1から3月期の売上高が会社の予想に届かない見込みと発表しました。同社は中国の工場が未だフル稼働していないので、iPhoneの供給が滞り、世界全体の売上高が落ちるだろうとしています。

サプライチェーンが分断されれば多くの産業で影響が出ますが、なかでもそれが顕著なのは自動車業界です。報道によれば、ジャガー・ランドローバー社は中国製部品をスーツケースに入れてイギリスに輸送しており、今後2週間で部品不足に陥る可能性があるとし、フィアット・クライスラー社も2から4週間で欧州の工場1ヶ所の生産を停止する可能性があるとしています。韓国の現代自動車も部品不足により国内の複数の工場が生産停止を余儀なくされるとしています。

新型肺炎の震源地である湖北省はゼネラルモーターズやホンダなど世界の大手自動車メーカーも多数進出する中国の自動車生産の拠点であり自動車部品製造企業も多数立地しています。そのため世界の自動車産業が大きな影響を受けることになりました。


3-2. 金融市場の混乱による影響

アメリカなどでは、一部の産業でサプライチェーンの分断が生じても、経済全体としては大きな影響は受けないと考えられますが、もし新型肺炎の流行を理由として金融市場が混乱すれば、アメリカのみならず世界経済、全体が冷え込む恐れがあります。

アメリカ株式市場は、新型肺炎、流行のさなかにあっても史上最高値を付け、各種の指標によればかなり割高になっています。バブルといってもいい状態にあるだけに、なにかきっかけがあれば一気にしぼんでしまう危険があるのです。

もしアメリカで株価が大きく下がれば、所有資産が減少したと感じた個人が消費に慎重になります。アメリカの個人消費はアメリカのGDPの70%を占めるアメリカ経済のかなめですので、個人消費が冷え込めばアメリカ経済は深刻な打撃を受けることになります。

アメリカ経済が落ち込めば、中国との経済関係が深くない国々にも新型肺炎の悪影響が及ぶことになり、世界全体の景気が悪化することになります。すると、中国はSARSのときのように民間消費の落込みを好調な輸出でカバーするということができなくなり、その経済状況はさらに厳しくなるでしょう。そして、それがまた世界に波及して世界全体が不況に陥る、という悪循環が起きる可能性も否定できません。

 


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