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日本の巨額債務問題 実際のところ どうなの?〜コーヒーブレイクしながらわかる

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1. 日本の財政状況 おさらい

まず、日本政府の予算がなにに使われているかをみてみます。

グラフは、2021年度の予算、106兆円が、どのような分野に使われているかを示したものです。一番多いのは社会保障、つまり、年金や医療、介護、子育てなどへの支出で、次に多いのが国債費、つまり、国債の償還と利子の支払いのための支出です。

いかにも国の仕事という感じのする公共事業は実は5.7%に過ぎず、国の借金の返済のための費用が実に22%にもなっています。

次に収入面をみてみます。

106兆円の収入のうち、税金などでまかなっているのは実は3分の2程度で、残りの3分の1は公債金、つまり国債を発行して行う借金によっています。

もし借金の返済の金額が、新たな借金の金額より多ければ、借金の残高はだんだん減っていきます。またもし借金の返済額と、新たな借金の金額が同じならば、ちょうど借金を借り換えている状態であり、これをプライマリーバランスが均衡した状態といいますが、借金の残高はずっと変わらないということになります。しかし日本政府は、借金を返す金額より、新たに借りる金額の方が多い状態であり、つまり借金の残高が次第に増えていく状態にあるわけです。

過去半世紀、日本の財政が、どう推移してきたかを示しているのが、財務省が公表しているこのグラフです。

歳出、つまり国の支出が伸び続ける一方で、税収は、バブルがはじけた1990年を境にして伸び悩み、歳出と税収の差が、財務省いわく、ワニの口のように開きます。その差は国債の発行で穴埋めされてきました。2020年度に歳出が急拡大し、国債の発行も急増しましたが、これは新型コロナウイルス感染症への対応によるものです。

この結果、国債の残高がどうなっているかというと、まもなく1000兆円に達しようとしています。ちなみに復興債というのは、東日本大震災からの復興のための財源とされる国債のこと、建設国債は、公共事業や出資金、貸付金といった、将来にわたってリターンが期待される事業のために発行される国債のことで、特例国債は、それら以外の資金を調達するための国債です。企業の活動に例えるならば、建設国債は、工場の建設などのための借入、特例国債は、人件費など運転資金のための借入金ということができます。建設国債の残高はあまり増えず、特例国債の残高がどんどん増えてきています。

このグラフは、中央政府の債務に地方政府や社会保障基金を合わせた、一般政府債務残高の・GDPに対する比率を・国際的に比較したものです。日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、これは、主要先進国のなかでは最も高い水準となっています。

日本の借金の状況を、他の先進国と比べてみたのがこのグラフです。

中央政府のみならず、地方政府や社会保障基金を合わせた債務の、各国のGDPに対する比率は、日本の債務残高はGDPの2倍を超え、主要先進国のなかでは最も高い水準となっています。

財務省は、一般政府債務残高がGDPの2倍を超える状況は、第二次世界大戦直後を超えて過去最悪であるとし、そして、日本のおかれた状況を、タイタニック号が・氷山に向かって突進しているようなもの、と表現しています。


2. 実際のところ、どの程度深刻なの?

日本の財政赤字が非常に大きく・債務残高が増え続けているのは事実ではあるのですが、そもそも財政赤字は、悪いものなのでしょうか?

借金は、個人ならば、住宅を買うときなど、特別な場合に限ってするものであり、借金が常にあるのは良くないこと、というイメージがあるかもしれません。しかし国の借金は個人の借金とは異なります。個人や企業が稼いだお金を使わずに、溜め込んでしまっているので、政府が彼らの代わりに買い物をしている、と考えることもできます。

例えると、お父さんが稼いできたお金で、お母さんがスーパーで食材を買ってきて、子供にご飯を食べさせるようなもの、と言うこともできるでしょう。

過去には、ギリシャなどで、政府の債務残高が大きくなり過ぎて、経済が破綻するという事例がありました。しかしこれらは国の外からお金を借りていたので、家計の例で言えば、お母さんが消費者金融からお金を借り入れて、子供の食材を買っているようなものです。日本政府の債務残高のGDP比は、当時のギリシャよりもずっと悪い状況ですが、債務のほとんどが日本国内の貯蓄でまかなわれているので、ギリシャと同じことが起こらないのです。

政府が国民から借り入れたお金も、将来は返さなくてはなりませんが、個人の借金と違って、政府の借金は、最後はお金を印刷して返すこともできるので、国内で借り入れた借金を返せなくなって破産するということはありません。

とはいえ次の章でお話しするように、借金をいくらでも増やしても問題が発生しないわけではないので財政に規律は必要ですが、少なくとも、現在問題が生じていないのですから、政府の債務残高のGDP比が今より大きく上昇しない限りは、なんら問題がない、と言うことができるでしょう。

債務の返済と新たな借入とが釣り合っている、いわゆるプライマリーバランスが均衡している状態の場合、政府の債務残高は増えないので、GDPが減らない限りは政府債務残高のGDP比は上昇しません。

さらに、債務の返済より新たな借入が多い場合でも、政府の債務残高がGDPの2倍以上もある現状では、債務残高の増加しても、それと同額GDPが増加しただけで債務残高のGDPに対する比率は下がりますし、GDPの成長率を押し上げるような、例えば・教育や研究開発関連に財政支出を振り分ければ、将来の分母が大きくなり、比率が下がる効果はより大きくなります。

また、このまま財政赤字が膨らめば、日本国債の格付けに影響が生じかねず、そうなれば、日本経済全体にも大きな影響が出るとしていう議論があります。

もし日本国債の格付けが下がると、円の金利水準が上昇し、円債が下落して金融機関が損害を受けたり、企業の外貨での資金調達コストが上がるなどの問題が出ます。

ただそれが、日本経済全体の大きな問題となるかはなんとも言えません。これまでにも日本国債の格付けは段階的に下げられてきていますが、大きな問題には至っていません。

よってこの点についても、今後政府債務残高のGDP比率が極端に上昇したりしない限りは、あまり気にするべき問題ではなさそうです。


3. 公債依存の問題点

しかしながら、現在の財政の状況に全く問題がないかというと、決してそうではありません。

財政の赤字が大きく拡大する前の1990年と現在の歳出を比べてみると、公共事業や教育などの経費は横ばいなのに、社会保障費が大きく伸びているのがわかります。歳入は、借金である公債金ばかりが増えており、社会保障の増額分を借入でまかなっているような状態です。

社会保障制度は本来、今生きている人たちが互いに支え合う仕組みですが、それを借入に頼っているというのは、子供や孫の世代に支えてもらっているようなものということができ、正常な状態ではないと言わざるを得ません。そのうえ社会保障費は、高齢化の進展によって、今後さらに増加することが見込まれており、この異常はさらに拡大してしまうと考えられます。

最近の言い方をするならば、制度の持続可能性が確保できていない、ということです。

また、昨年の衆議院選挙で、与党も野党もこぞってバラマキに等しい給付金の支給を唱えていたことからもわかるように、昨今、公債に頼っていくらでも支出ができるという風潮が広がっています。このままでは、中長期的な経済成長には役立たない支出のための借入金が急増する恐れがあります。中長期的な経済成長には役立たない借入が増加すれば、政府債務残高のGDP比率はさらに押し上げられることになります。

前の章でお話ししたように、日本政府が国内で借り入れた借金を返せなくなって破産するということはあり得ませんが、政府債務残高のGDP比率がどんどん高まっていた場合に、お金を刷って巨額の債務を返済すれば、高率のインフレ、ハイーパーインフレーションが発生します。お金を刷って返済をしないのであれば、大幅な増税がなされることになります。将来の世代の人々が、決定に関与できなかったことで税負担を求められることになり、また、例えば所得税率が極端に高くなれば、経済の活力が失われるなど様々な問題が発生します。

以上をまとめてタイタニック号に喩えるならば、「向こうの方に見えている氷山は、当面衝突することはなさそうなほどには遠いけれども、まっすぐ進めば衝突するので、回避の行動をとらなければならない」といったところでしょうか。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 


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