リーマンショック級景気悪化で日経平均13000円へ
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1. コロナショックはリーマン級?
当ラボでは、新型コロナ肺炎が中国および日本の経済に与える影響については比較的早い段階で相当に大きいことを予測しました。しかし世界経済に与える影響については、アメリカ株式市場の急落がない限り軽微としました。その後アメリカ株の急落が現実となったことから見通しを下方に修正しましたが、3月中旬以降の情勢をみると、世界経済の状態は、その予想をさらに上回って悪いことは間違いなさそうです。
世界中のエコノミストが当初、新型コロナ肺炎の世界経済に及ぼす影響を過少に見積もったのは、第一に、これほどまでに感染が広がるとは予想できなかったためであり、第二に、リーマンショックやアジア金融危機など過去の経済危機は金融面の混乱が原因だったのに対し、今回は感染症が原因であり金融は安定しているためです。そして第三に、災害により一時的に個人消費が抑えられても、いったん終息すれば、消費を取り返そうとする動きも出て、経済はV字型に回復するという過去の経験則があるためです。
しかし第一の点については、感染は中国やアジアの外へ拡大し、感染の中心地はもはやアメリカや欧州と言うべき状態になってしまっています。
第二の点については、外出制限等により個人消費が低迷し、また、需要が激減した観光や娯楽産業などで資金繰りに窮する企業が増えるなど、金融面での混乱を起因としない実体経済の落ち込みが発生しています。
第三の点については、観光や娯楽産業を中心に企業倒産の可能性が高まっており、雇用縮小の動きもあるので、感染症終息後も一定の影響が残ることが予想されます。
では、3月中旬以降の情勢の悪化を踏まえると、世界経済はどうなると予想されるでしょうか。
それを考えるうえで念頭に置かなくてはならないのは、新型コロナ肺炎が発生する直前に、アメリカ経済が長い景気拡大局面の末期にいたということです。グラフはアメリカの失業率の推移を示したものですが、戦後のアメリカの景気拡大期間は平均すれば5年ほど、長くても8年ほどです。リーマンショックのあと10年以上にわたって景気拡大が続いたので、アメリカ経済はきっかけさえあればいつでも景気後退に陥る状態にあったのです。
それゆえアメリカ経済は新型コロナ肺炎をきっかけとして景気後退局面に入ったと考えられるのですが、肝心なのは、景気の後退がどの程度深い谷を刻むことになるかです。
当ラボでも3月以降の情勢が反映された統計数値が出揃った段階で改めて試算を行う予定ですが、すでに各方面より今回の景気後退が非常に深いものになるとの予想が出されています。
IMFの専務理事は、世界経済の落ち込みはリーマンショックのときと同じかさらに深刻となるだろうと述べています。アメリカの4-6月期のGDPについて、JPモルガンチェースはマイナス14%、ゴールドマン・サックスはマイナス24%、モルガン・スタンレーはマイナス30.1%も、落ち込むとし、リーマンショック級のリセッションが到来することを予想しています。
2. じゃあ株価はどうなるの?
2月下旬より株式市場が大荒れとなっていますが、新型コロナ肺炎の経済への影響がリーマンショック級と仮定した場合、株式市場は今後どうなると考えられるでしょうか。
まず、グラフは2002年からのダウ平均株価の推移ですが、リーマンショックで大きく下げたあとに、非常に長い上昇局面にはいったことがわかります。2017年頃からの上昇は急過ぎるようにも見え、このところの株価急落も、自然な株価の調整と考えてもおかしくはないことがわかります。
このグラフにアメリカの名目GDPの推移のグラフを加えてみましょう。もし株価の上昇が名目GDPの伸び程度となるとすれば、ダウ平均株価は14000ドル程度にまで落ちても不思議ではないということになります。
日経平均株価で同じようにみていくと、やはり、このところの下落は長期的なトレンドラインへ回帰する動きとみることが可能です。
グラフに名目GDPの伸びを重ねてみると、日本のGDPには伸びがほとんどないのでかなり極端なことになりますが、日経平均株価が9000円をも下回ってしまう可能性もあるということになります。
グラフはリーマンショック前後のダウ平均株価の推移です。リーマンショック前の最高値からリーマンショック後の最安値までの下落幅は54%でした。また、リーマンショック直前から最安値までの下落幅は43%でした。
これを今回にあてはめると、直前の最高値から最安値へ43%下落するとすればダウ平均株価は16762ドルとなり、54%下落するとすれば13602ドルまで落ちるということになります。
日経平均株価で同様にみてみると、リーマンショック前の最高値からリーマンショック後の最安値までの下落幅は実に62%で、リーマンショック直前から最安値までの下落幅についてはダウ平均株価と同じ43%でした。
これを今回にあてはめると、日経平均株価は、高値から43%下落するとすれば13746円となり、62%下落するとすれば9000円近くまで落ちることになります。
下落の目処を考えるとき、株式市場関係者はよく株価純資産倍率、PBRを使用します。PBRは、株価が企業の純資産の何倍かを示す数字で、1倍を下回る場合、企業が所有資産を売却し負債を返済した残金よりも株価が下回っていることを意味し、株価が割安過ぎるということになります。日経平均のPBRには、日経平均採用銘柄の加重平均ベースのものと単純平均型の日経平均の算出方法に合わせた指数ベースのものの2種類があります。
日経平均の、リーマンショックの時の加重平均PBRの最小値は0.81でした。現在の日経平均株価では17000円程度のときに0.81となることから、3月13日から24日にかけて17000円前後となった下落で今回の急落局面は終わりとの見方もあります。
しかし指数ベースのPBRを使用すると景色が大きく変わります。現時点で指数ベースのPBRが1となるのは13600円前後であり、リーマンショック時の最小値0.87をあてはめてみると約11800円まで下落余地があるということになります。
以上をまとめると表のようになります。未だにかなりの下落余地があるということになりますが、例えば為替レートが変動すれば十分にあり得る水準だと思われます。
リーマンショックのときは、わずか2ヶ月ほどの間に20円以上の円高が進みました。当初日本はサブプライムローンの影響をあまり受けませんでしたが、円高によりアメリカの不況が伝播することになりました。今回は一時的に円高が進んだもののすぐに元に戻っています。しかしアメリカの金利引き下げにより今後円高が進む可能性は十分にあり、20円を超えるような大きな円高となれば、日本経済は深刻なダメージを受け、株価はさらに下押しされるでしょう。
リーマンショック発生後の日経平均株価の動きを細かくみると、リーマンショック後の最初の影響日を第1日目とした場合、1日目に5%下落したあといったん戻り、本格的な下げは10日目から始まりました。16日目に9.4%暴落し、その翌々日には下落幅が1000円を超え一時取引停止になりました。ところがその翌日、日経平均の歴史上最大の上昇率となる14.5%の上昇を記録しました。しかしもう一段の下げがあり、29日目に7000円を下回る最安値を付けました。
そのあと34日目にかけて急上昇し、19日目にいったん戻したあたりまで回復するのですが、その後は再び下落基調となり、115日目に29日目につけた最安値とほぼ同じ水準付けて、ようやく下落トレンドを脱することになります。
今回の株価急落の推移のグラフを、新型コロナ肺炎後で最初の3%を超える株価下落があった2月25日を第1日として、リーマンショック時の株価推移のグラフと重ねてみましょう。すると下落幅も、下落にかけた日数も、かなり似ていることがわかります。3月24日と25日の2日で15.1%もの急反発をしましたが、これもリーマンショック時の19日めの歴代最大となる上昇と驚くほどに合致しています。
となると、すぐにももう一度大きな下げがあり、29日目あたり、すなわち4月第2週あたりに最安値を付けて、いったん19000円前後にまで戻すものの、再び下落基調に入って、115日め、すなわち8月中旬頃に底をつけて回復基調に入るというシナリオが考えられるでしょう。
Some clues...
省略(動画本編でご覧ください)