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日経225オプション【後編】個人投資家向け安定資産運用案〜コーヒーブレイクしながらわかる

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5. ポジション管理

まずは、前編で説明した4つのリスク指標をおさらいしておきましょう。

デルタは日経225の変動によりオプション価格がどれだけ動くかを示す指標、ガンマは日経225の変動によりデルタがどれだけ動くかを示す指標、ベガはボラティリティが変化した時にオプション価格がどれだけ動くかを示す指標、そしてシータは、1日経過するごとにオプション価格がどれだけ減少するかを示す指標でした。

実際にこれらのリスク指標を使う時は、オプションを買う場合には指標をそのまま使えばいいのですが、売る場合は、マイナス1を掛けた数字がその売りポジションの指標になります。

オプションを複数枚持つ場合は、建玉それぞれのリスク指標を足し合わせてポジション全体の指標を算出します。例は行使価格24000円のコールを1枚買い、同じく24250円を2枚売った場合です。このケースでは行使価格24000円の指標から、行使価格24250円の指標を2倍してから引くことになります。

日経225先物を持っている場合は、それも足し合わせます。日経225先物の買いのデルタは1、売りはマイナス1となります。ミニ先物はその10分の1となり、つまり買いは0.1、売りはマイナス0.1です。ガンマ、ベガ、シータはいずれもゼロとして計算します。

TOPIXの先物を持っている場合は、それも参入しましょう。例えば、日経225をTOPIXで割ったNT倍率が14テン5の場合、TOPIXミニ先物1枚の日経225に換算したデルタは、0.1÷14.5×10で、約0.07となります。よって、TOPIXミニ先物を2枚売っているならば、先ほどのデルタの値から約0.14を引き、デルタ値はマイナス0.29となります。

以上でオプションと先物のポジションのリスク指標を算出することができましたが、さらに、日本株の現物も参入して計算することもできます。日本株現物の時価の合計額を日経225の1000倍で割れば、日経225に換算したデルタ値を求めることができます。それを加えれば、日本株ポートフォリオ全体のリスク指標を算出できます。

これらの指標を常に把握しておくことは、オプションを使った安定資産運用ではとっても大事です。そして各指標について、どの範囲に収まっていれば許容できるか、あらかじめ自分なりのルールを決めておくのがいいでしょう。各指標を常に睨み、もし相場が予想と大きく異なって動き、指標があらかじめ決めたルールから逸脱してしまった時は、ポジションを組み替えてルールの範囲内に収まるようにするか、潔く損切りをするのがいいでしょう。

各指標の中で特に重要なのはデルタ、つまり日経225の変動により資産額がどれだけ増減するかを示す指標です。安定資産運用を目指す場合、デルタのルールは例えば次のように決めるといいでしょう。

日経225が22500円の時に、日本株の現物を総額1125万円持っているとします。そのデルタ値は0.5です。この場合に、先物とオプションのデルタ値を常に0から-0.5の間に保つというルールを決めると、日本株ポートフォリオ全体のデルタ値は0.5から0の間となります。つまり、相場上昇時には、ポートフォリオの総額は増加し、最悪の場合でも減額することはありません。相場下落時は、現物株の下落分の一部もしくは全部が先物とオプションからの利益により補われ、ポートフォリオ総額は、最良の場合相場下落にも関わらず減らず、最悪の場合でも、現物株の下落分を超えて減ることはない、ということになります。

日経225先物オプションのポジションのデルタ、ガンマ、ベガ、セータの値は、各証券会社の取引画面で確認できます。また、RSSと呼ばれるツールを使って各証券会社からリアルタイムで送信されるデータをエクセルなどに取り込めば、TOPIXや現物株をも含めたポジション管理をすることもできますので、オプションを使った資産運用を本格的に始める時にはぜひ導入してみてください。


6. 個人投資家向け安定資産運用法

それでは、日経2255オプションを使った安定的な資産運用方法の一例をご紹介します。

この戦略では、相場下落時には先物とオプションで利益を出して、現物株の損の一部をヘッジし、相場が膠着もしくは緩やかに上昇する時も、オプションで着実に利益を稼ぐようにします。そして相場が大きく上昇する場合は、先物オプションからは損失が出ますが、その損が現物株上昇による利益の半分の金額より大きくならないことを目指します。

これらをギリシャ文字のリスク指標で言い直すと、ひとつめは、原資産価格が下がる時に先物オプションで利益が出るようにするのですから、デルタがマイナス、となり、ふたつめは、時間の経過とともに利益を出すので、シータがプラス、となります。三つ目は、現物株のデルタをSとすると、先物オプションのデルタが、Sの2分の1より常に大きい、と言い変えることができます。

第一の目標の、デルタのマイナスと、第二の目標の、シータのプラスを達成する方法としてまず挙げられるのはコールの売りです。グラフは、中編で見た、コールの売りの損益曲線で、黄色い曲線がオプションを売り建てた時、緑の線が満期時を示しています。

コールの売りでは、原資産価格が上昇し権利行使価格を超えるあたりから、デルタが一気に小さくなってしまいます。そこで売り建てる時には、原資産価格がどんなに上昇しても、上回ることがないと思われる行使価格を売るようにします。

ただ、権利行使価格が原資産価格から遠いオプションは、満期が近づくとプレミアムがほとんどなくなってしまいます。そこで原資産価格に近い行使価格のコールの売りも考えてみなければなりません。

しかし、原資産価格の変動によりデルタがどれだけ動くかを示す指標であるガンマは、権利行使価格が原資産価格に近いほど大きく、満期日が近づくと、ますます大きくなるという性質があります。つまり、権利行使価格が原資産価格に近いオプションは、特に満期日が近い場合には、値動きが激しすぎて、安定運用を目指す場合には非常に使いにくいと言うことができます。

そこで、原資産価格に比較的近い行使価格のコールを売る場合は、レシオ・スプレッドを組むといいでしょう。レシオ・スプレッドのガンマの絶対値は単純にコールを売る場合に比べて小さくなるので、原資産価格が行使価格に近づいてきてポジションを組み直さなければならなくなった場合も、やや余裕をもって組み直すことが可能となります。

それにレシオ・スプレッドには、満期時の原資産価格と売り建玉の権利行使価格とが一致すれば大きな利益を得ることができる、というメリットもあります。

プットを使って、第一の目標であるデルタのマイナスと第二の目標であるシータのプラスを達成する戦術としてはカレンダー・スプレッドがあります。なお、原資産価格が下落して売り建玉の権利行使価格を下回ると、デルタがプラスに反転しますので、その前にポジションの組み直しをする必要があります。それから、ボラティリティーの変化によるオプション価格の変化を示す指標である、ベガがプラスのためボラティリティーが下がる時には損失がでるので注意が必要です。

相場の急落を予想しているような場合にはバックスプレッドを考えましょう。バックスプレッドのシータは原則としてマイナスですが、ポジションを組む時にクレジットの状態、つまり、オプションの、売り玉の総額が、買い玉の総額を上回っている状態で組んでおけば、相場の急落が起きなくても、満期の原資産価格が売り玉の権利行使価格を上回れば利益を得ることができます。

なお、相場急落時に大きな利益を得るためには買いの枚数を売りの枚数の3倍程度以上にする必要があります。また、買い建玉と売り建玉の行使価格を離しすぎると、原資産が中途半端に下がった時に大きな損失が出てしまいます。売り建玉の行使価格から離れすぎない行使価格で、売りの3倍の枚数を、クレジットの状態で買い建てるためには、ボラティリィティイが低い時にポジションを組まなければなりません。相場急落が既に始まっておりボラティリティイが高い状態の時にはバックスプレッドを組むのは見送ったほうがいいでしょう。

最後に、コールの売り、コールのレシオ・スプレッド、プットのカレンダー・スプレッドを一度に組んだときの損益曲線をみておきましょう。グラフは、日経225が22500円で、期近物の満期まで30日の時にポジションを組み、さらに、ミニ先物を1枚買って、デルタの値をマイナス0.15とした場合です。

ボラティリティーに変化がなく、満期までポジションを全く変更しないとすれば、時間の経過とともに利益となる日経225の価格の範囲が広がっていき、最終的には21000円から24000円の広い範囲で利益が出ることがわかります。

この損益曲線を見ると明らかなように、この戦略の弱点は相場の急騰に弱いことです。日経225が2000円以上上昇するようなことがあると大きな損失がでるので、その前に適宜ポジションの組み替えを行う必要があります。また、ポジションを組んだ時にデルタがマイナスでも、日経225が下がるにつれてデルタはゼロに近づき、やがてプラスに変わりますので、現物株のヘッジとして機能させるためには、デルタの調整を適宜行う必要があります。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 


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