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2020アメリカ大統領選の見方〜コーヒーブレイクしながらわかる

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1。2020アメリカ大統領選大統領候補指名以降の流れ

アメリカ大統領の選挙戦は、前半と後半にわけることができます。前半戦は年初から夏にかけて行われる、各党が大統領候補を絞り込む時期で、後半戦は選出された各党の候補者が他の党の候補者と、大統領を目指して競う時期です。

つまり大統領選まで2ヶ月となった現在は、ちょうどこの、五合目の白い点線を越えたところということができます。

8月17日から20日に、オンラインで民主党の党大会が開催され、バイデン氏が民主党の大統領候補として正式に指名されました。バイデン氏は上院議員を36年、オバマ政権で副大統領を8年つとめたベテラン政治家です。現在77歳で、大統領選に勝利すれば史上最高齢の大統領となります。また副大統領候補は、女性で、55歳と若いハリス氏に決まりました。ハリス氏は黒人女性としては史上2人目の上院議員となったことで、アメリカ全土で有名になった人物です。

共和党の党大会は8月24日から27日にかけて開催され、大統領候補にトランプ現大統領を、副大統領候補にペンス現副大統領をそれぞれ指名しました。

いよいよ9月から後半戦となり、政党間の激しい選挙戦が始まるのですが、その流れは、大統領候補、副大統領候補の二人がタッグを組んで、アメリカじゅうを遊説してまわったり、テレビに出演したり、テレビCMを流したりして国民の支持を集めます。候補者が直接対決する討論会もあります。今回は、このようなスケジュールで大統領候補の討論会が3回行われ、さらに副大統領候補の討論会も行われる予定です。

そして11月3日に一般選挙が行われます。アメリカの大統領選は、形式的には国民が直接大統領を選ぶのではなく、あらかじめどの大統領候補に投票するかを表明している選挙人団を選ぶという形がとられており、選挙人団を選ぶ選挙が一般選挙です。

選挙人の総数は538人で、これが各州に人口にしたがって割り振られます。一番配分が多いのはカルフォルニアの55人です。

選挙人の選出は、ネブラスカとメーンをのぞく全ての州で勝者独占方式で行われます。つまりもしカルフォルニア州で民主党の得票が共和党をわずかにでも上回った場合、カルフォルニアの選挙人55人が全て民主党で独占されることになるのです。

その後、12月14日に一般選挙で選出された選挙人が州都に集まって大統領の選挙を行います。この選挙で選挙人総数538の過半数の270票を得た候補が大統領に選出されるのですが、各選挙人はまず間違いなくあらかじめ表明した候補に投票するので、11月の選挙の時点で結果はわかっており、この12月の選挙は形式的なものです。

11月の選挙の時点で結果はわかっており、この12月の選挙は形式的なものです。


2。両候補の支持率の動向

両大統領候補の支持率の推移を見てみましょう。バイデン氏の支持率が50%前後であるのに対しトランプ氏の支持率は40から45%程度で、バイデン氏の優勢な状況が続いています。

支持率の差のグラフを重ねてみます。これによると支持率の差は年初には4ポイント台でしたが、4月にかけて7前後にまで広がります。5月下旬にかけていったん縮まり、その後再び拡大して6月下旬には10を越えました。8月に入ると差は縮小傾向となり、8月末には7を切りました。

5月下旬から6月下旬にかけて支持率の差が大きく拡大しますが、これは、5月末に黒人男性が警官に暴行され死亡する事件が発生し、その後全米にデモが広がったので、その影響が大きいと考えられます。

また、これにアメリカの新規のコロナウイルス感染確認者数のグラフを重ねてみると、コロナウイルスの感染が拡大すると支持率の差が広がるという傾向を見てとることができます。

このグラフが示すとおり、アメリカ全土での支持率は一貫してバイデン氏がリードしているのですが、大統領選では、州ごとに割り振られた選挙人をソウドリして過半数をきそうので、州ごとの状況がより重要となります。2016年の大統領選では、事前の調査でリードしていたクリントン氏が、一般選挙での総得票数でも200万票も上回ったにも関わらず選挙人の過半数をとれずトランプ氏に敗退しました。

今回の選挙で、現在のところ、バイデン氏が優勢の州を青で、トランプ氏が優勢な州を赤で示すとこのようになります。

バイデン氏が優勢の州の選挙人数の合計は、トランプ氏のそれを大きく上回っていますが、過半数を越えてはいないので、激戦州によって結果がどちらにも転がることがわかります。

激戦州は16州ありますが、それらの州は2016年の選挙でも、ミズーリを除いた全ての州で得票率の差が10ポイント以内の僅差となりました。2016年は、僅差の州の選挙人の多くをトランプ氏が獲得し、結局激戦州での選挙人獲得数でトランプ氏が大きくリードすることとなりました。

今回の選挙について、8月末の支持率を使って予想してみると、選挙人獲得数は、バイデン氏が106人、トランプ氏が103人となります。

バイデン氏が優勢の州での選挙人数合計は212人なので、過半数に達するためには、激戦州で58人を獲得すればよい、ということになります。


3。情勢を動かす要因

現在のところ、バイデン氏が優勢であることは明らかなのですが、今後2ヶ月間で情勢を変化させる要因としては次のようなものがあります。

グラフは新型コロナウイルスの新規感染確認者数の推移です。先ほどみたとおり両候補の支持率の差と新型コロナウイルス流行状況には相関関係があるようなので、今後流行がさらに鎮まればトランプ氏に有利に、拡大に転じればバイデン氏に有利に働くことになりそうです。

グラフは失業率の推移です。アメリカの失業率は一時14.7%にまで悪化し、その後緩やかに回復してきていますが、7月時点で10.2%と未だに厳しい状況にあります。今後経済が回復し失業率がさらに低下していけばトランプ氏の支持率は上昇するかもしれませんが、今のままであれば、国民の不満が募り、トランプ氏には逆風が吹くでしょう。

大統領選の結果を左右する3つ目の要因は、バイデン氏の健康問題です。バイデン氏には認知症の疑いがあり、演説の最中に独立宣言の有名な言葉を思い出すことができなかったり、自分の家族を紹介するときに、両側にいた妻と妹を間違えたりといったシーンがみられています。付いたアダナが「スリーピイー・ジョー、寝ぼけたジョー」です。

また、バイデン氏の次男のハンター・バイデン氏は、以前の動画でもご紹介したウクライナ疑惑の中心人物であり、中国から多額の便宜供与を受けたとも言われていて、この札付きの息子に絡む疑惑がバイデン氏の足を、引っ張る可能性があります。

人種問題も大きな争点となりそうです。5月に黒人男性が警官の暴行で亡くなった事件があり、全米でデモが行われ、コロナウイルス拡大と重なったこともあってトランプ大統領の支持率はかなり低下しました。また8月23日に黒人男性が警官に背後から7発の銃弾を撃たれ重体となった事件のあと、各方面で抗議活動が行われています。

人種問題についてバイデン氏は、国民の団結と人種差別の撤廃を訴えていますが、一方トランプ氏は治安維持を唱え、秩序を重んじる姿勢を前面に打ち出し、バイデン氏を弱腰と批判しています。8月23日以降、トランプ氏の支持率は上がっており、今のところトランプ氏の姿勢のほうが票につながりそうですが、今後抗議活動がさらに広がれば状況は大きく変わるかもしれません。

バイデン氏は8月11日にハリス氏を副大統領候補に指名しました。ハリス氏は55歳と若く、アフリカ系で、南アジアの血も引くマイノリティイです。女性であり、話すことがうまく、実務能力も高いと考えられています。高齢の白人男性であるバイデン氏の弱いところを補うことが期待されているのですが、実際に若年層、マイノリティイ、女性の票などをどの程度呼び込めるかは流動的です。


4。バイデン氏が当選するとどう変わる?

もしバイデン氏が勝利したら、アメリカや国際関係はどう変わるでしょうか。

オバマ元大統領の副大統領であったバイデン氏は、トランプ氏によって覆された政策の多くを元に引き戻すと考えられます。

トランプ氏が厳格にした移民政策は緩和されるでしょうし、銃規制は強化されるでしょう。

核兵器開発の疑惑があったイランと米英等6カ国は、イランがウラン濃縮活動を制限することなどの見返りに経済制裁を緩和するイラン核合意を締結しましたが、トランプ大統領は2018年にこれを離脱しました。イラン核合意はオバマ政権下で締結されたものであり、バイデン氏はこれに復帰することを目指すと考えられます。

地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定において、アメリカは、温室効果ガスの排出量を2025年までに26から28%削減する等の約束をしましたが、2019年11月にパリ協定離脱の手続きをしており、その1年後の2020年11月に離脱する見込みです。

世界最大の産油国であるアメリカにとってデメリットが大きいので、トランプ大統領はアメリカファーストの考えから協定離脱を決めたのですが、パリ協定の前身の京都議定書は民主党の当時のゴア副大統領が中心となって策定されたものであり、パリ協定もオバマ大統領がリードしてつくられたものなので、民主党が政権を奪還すればアメリカはパリ協定に復帰すると見込まれます。

アメリカ国内向けの政策についてはどうでしょうか。バイデン氏と民主党候補指名獲得競争で戦ったサンダース氏は、自らを「民主社会主義者」と呼ぶ民主党左派の代表格です。バイデン氏は中道路線ですが、左派への配慮も目立ち、例えばトランプ政権が35%から21%へ引き下げた法人税を28%に再び高めるとしており、また個人所得税の最高税率を引き上げて、富裕層の資産取引課税の強化も行うなど、企業と富裕層への増税を打ち出しています。

米中関係については、オバマ政権が中国に融和的だったので、バイデン氏もそうだろうとの味方もあります。しかし今は、中国に対して強い姿勢を示せば票につながり、弱腰の姿勢は票を失うので、両陣営ともに対中強行姿勢を競うような状況となっています。それに人権問題に関心が薄いように見えるトランプ大統領に対し、民主党政権はもともと人権問題に関心が高いので、香港問題やウイグル問題などでの中国への対応は一層厳しくなるとも考えられます。

ただし、オバマ政権は多国間の外交や同盟国との連携を重視していましたし、この8月に公表された民主党の政策綱領にも「同盟関係を修復し再構築する」と明記されているので、トランプ政権のような、アメリカが一国で、自国の利益を最優先して、二国間関税の強化などで中国に対処する形から、他国と連携して中国に圧力をかける形に変わるとも考えられます。そうなれば、中国の姿勢にも変化が現れるかもしれません。


Some clues...

省略(動画本編でご覧ください)

 


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