SDGs 持続可能な開発目標〜コーヒーブレイクしながらわかる
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1. SDGsって何?
SDGsはSustainable Development Goalsの略です。日本語では通常、持続可能な開発目標、と訳されますが、噛み砕いて言うと、未来永劫全ての人にとって住みやすい地球を作ろう、ということです。
SDGsは2001年に国連で策定されたMDGsを引き継ぐものです。MDGsは、発展途上国について、2015年を期限として貧困や飢餓、初等教育、女性等に関する8つの目標の達成を目指すもので、15年を経て、極度の貧困が半減するなど一定の成果を達成したものの、乳幼児の死亡率削減などは達成できず、課題が残りました。
そこで2015年9月。ニューヨークの国連本部で「持続可能な開発サミット」が開催され、SDGsは全会一致で採択されました。
SDGsの大きな特徴が守備範囲がとっても広い、ということです。前進の、MDGsでは途上国の開発が目指されましたが、SDGsでは先進国で達成されるべき目標も設定されています。SDGsは誰一人取り残さないことをモットーとしており、取り組む課題は経済から社会、環境と広範囲にわたります。そして、国家だけでなく、企業やNGOなども大きな役割を担うことが期待されています。それゆえ、先進国である日本の民間企業に勤めるような人にも大いに関係する身近な問題となったのです。
SDGsが掲げる目標は、5つのPに分類することができます。すなわち、飢餓の撲滅など人間に関するもの、経済成長など豊かさに関するもの、環境保全など地球に関するもの、暴力の撲滅など平和に関するもの、国家間の協調などパートナーシップに関するものの5つです。
SDGsには全部で17の目標があります。そして、目標それぞれについて10種類程度、合計169種類の具体的なターゲットが設定されています。
5つのPのうちの、人間に関する目標は6種類あります。これらは主に発展途上国を対象としたものといえますが、シングルマザーの貧困など、日本でも解決されなければならない問題もあります。
2つめは飢餓をゼロに。全ての人が安全で栄養のある食料を十分に得られるようにすることなどが目指されます。
3つめは全ての人に健康と福祉を。新生児の死亡率を1000人中12人以下にすることなどが目指されます。
4つめは、全ての子供が教育を受けられるようにしたり、全ての男女が職業教育や高等教育へアクセスできるようにすることなどです。
5つめは、女性や女の子に対する差別や暴力をなくすことなどです。
6つめは、全ての人に安全な飲料水や下水施設へのアクセスを可能にし、野外の排泄をなくすことなどです。
5つのPのうちの、豊かさに関連する目標は5種類あります。これらは、働き甲斐、男女平等、住環境など、日本を含む先進国や民間企業、消費者にも大いに関係する、私たちにも身近な問題です。
第7番目の目標は、すべての人が手ごろでクリーンなエネルギーを利用できるようにすることなどです。
次に、持続可能な経済成長を達成し、全ての男女に働きがいのある雇用を提供することなどです。
インフラの開発、産業化の推進、イノベーションの拡大についてです。
そして、国内や国家間の不平等を是正すること、都市や住宅を住みよくすることが続きます。
目標の12番目から15番目は3つのPのうちの、地球に関するもの、16番目は平和に関するもの、17番目はパートナーシップに関するものです。
まず、天然資源の効率的な利用や廃棄物の削減などについてです。
次に、気候関連の災害や自然災害に対し、具体的な対策を実行することなどです。
14番目は海についての、15番目は森林や湿地など陸地についての環境保全の問題が取り上げられています。
16番目は、平和で公正な社会を実現し、すべての人に司法へのアクセスを提供することなどです。
最後の17番目の目標は、途上国への資金や技術面での援助、貿易や政策協調の体制づくりなど、世界的な協力関係についてです。
2. 各国のSDGs達成状況
SDGsには法的な拘束力はなく、目標を達成できなかった国が罰せられるようなことはありませんが、毎年7月頃に各国の閣僚やビジネス関係者などが参加するハイレベル政策フォーラムが開催され、各国の進捗状況がモニタリングされています。
各国は毎年SDGsの達成状況の報告をします。このようなフォローアップの仕組みが、SDGsを、単なる理念の提唱ではなく、実効性のあるものにしています。
では各国での目標達成状況をみてみましょう。日本の達成状況が良いものから悪いものへ順に見ていきます。
緑色で塗られている国は目標を達成していることを示しています。日本は教育と、産業化やインフラの整備などで目標を達成しているとされています。
黄色で塗られている国は、その目標について、もう少しで目標を達成できるということを意味しています。
日本は、医療や安全な水、労働環境、暴力の少なさといった点で比較的状況がいいことが示されています。
オレンジ色は、まだまだ努力をしなくてはならないという意味です。
日本は飢餓の撲滅、クリーンエネルギーの利用、平等の拡大、住環境、海や陸地の環境保全といった点での改善が求められています。
赤色は、目標の達成に程遠く、かなりの改善をしなくてはならない、という意味です。日本は男女間の平等、消費者の責任、気候変動に対する対策、国際協調の点で大いに改善しなくてはならないとされています。
3. 日本政府のSDGsへの取り組み
日本では、SDGsを推進するために、総理大臣を本部長、全国務大臣を構成員とするSDGs推進本部が2016年5月以降、1年に2回開催されています。
推進本部は第2回会合で、日本としての中長期的戦略である「SDGs実施指針」を策定しました。
実施指針には、8つの優先課題が掲げられています。
実施指針で掲げられた8つの優先課題に対応する具体的な施策として、SDGsアクションプランが2017年12月に作成されました。
SDGsアクションプランには、ビジネス関連、地方創生関連、子供や女性関連の3つの柱があります。
1つ目の柱ではSociety5.0の推進を通じて、ビジネスやイノベーション関連の目標の達成が目指されます。
Society5.0とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に次ぐ人類の社会の発展の歴史における5番目の社会であり、ドローンや、ロボット、自動運転やAI、遠隔医療やIOTなどの革新技術を最大限に活用して人の暮らしや社会全体を最適化した未来社会とされています。これらにより、医療、食料、環境、エネルギー、防災などの社会の課題を解決し、SDGsの達成を目指します。
2本目の柱は地方創生やインフラの整備などです。
自然本来の機能を活かしたインフラ、グリーンインフラの推進や、G20大阪サミットで共有された、2050年までに海洋プラスチックゴミの汚染をゼロにする「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現などが目指されます。
3本目の柱は、次の世代の人々や女性のエンパワーメントです。働き方改革の着実な実施や女性の活躍推進、持続可能な開発のための教育、ESDの推進などが目指されます。
4. 日本企業とSDGs
ビジネスの世界でSDGsが注目されるようになった、きっかけは、2017年1月の、世界経済フォーラム、ダボス会議です。ここでSDGsを達成することで12兆ドルの経済機会が生まれるとの報告がなされ、これにより日本企業もSDGsは単なる高尚な理念ではなく、利益につながるものであると意識するようになりました。
同じ年の11月、経団連が企業行動憲章を改定し、会員企業はSDGs達成に向けて行動すると宣言しました。SDGsが国連で採択されたのは2015年9月で、そのあとしばらくはあまり話題にあがることがなかったのに、2018年頃からSDGsということばを頻繁に耳にするようになり、SDGsに取り組む企業が増えたのは、この経団連の企業行動憲章の改定の影響が大きいと言えるでしょう。
5. SDGsとESG投資
ESG投資とは、環境、社会、企業統治の3つの観点から企業の成長性などを評価して行う投資のことです。つまり、損益の状況や財務の状況だけをみるのではなく、環境問題への対応や地域社会への貢献、働きやすい職場づくりなどへの取り組み状況も評価して投資するのがESG投資です。
ESG投資で重視されるポイントの多くはSDGsと共通しているので、ESG投資とSDGsは親和性が非常に高いと言えます。
企業はSDGs達成に取り組めばESG投資を呼び込むことができるので、ESG投資はSDGsを推進する強力なエンジンとなっています。
ESGは、2006年に国連が提唱した責任投資原則のなかで初めて導入された考え方です。国連は、世界の機関投資家に対しESGを考慮して投資を行うことを推奨し、責任投資原則への署名を求めました。
ESG投資には、SDGsの達成に貢献できるという社会的意義だけでなく、環境や社会、企業統治に関連する訴訟リスクなどを抑えた、安定した運用が可能となることや、SDGsへの意識の高まりによる需要の変化を捉えることができるなど、投資の本来の目的である金銭的なリターンも期待できます。
このため、長期的な安定運用を行う機関投資家を中心に多くの投資家がESG投資に賛同し、世界で約2000の機関が国連の責任投資原則に署名をしました。日本では2015年に世界最大のファンドであるGPIFが署名したことで、ESG投資が大いに注目されるようになりました。
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省略(動画本編でご覧ください)