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1からわかる半導体(上)半導体&半導体業界〜インフレ〜コーヒーブレイクしながらわかる

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そもそも半導体って何?

最近、半導体関連のニュースをよく目にしますが、そもそも半導体とは何でしょうか?

鉄やアルミニウムなど、電気を通す物体が導体、木やゴムなど電気を通さない物体が不導体と呼ばれるので、半導体は、半分だけ、もしくは少し電気を通す物、と考えてしまいそうですが、そうではありません。半導体は、条件によって電気を通したり、通さなかったりする物質のことで、シリコンなどがこれにあたります。

また、そのような物質を使って作る、電流を制御する部品も慣用的に半導体と呼ばれます。

例えばダイオードは、特定の方向に電圧をかけた場合に電流が流れ、逆にした場合は流れない、つまり、電流を一方通行にする機能を持つ半導体部品です。

トランジスタは、小さな電流を数百倍の大きな電流に増幅したり、信号によって電流を流したり止めたりするスイッチのように使用される半導体部品です。

ただ実は、「半導体価格が高騰している」とか「半導体関連の株価が上がっている」とか言う場合の「半導体」は、これらの意味での半導体ではありません。

この場合は、多数のトランジスタなどの部品を配線で接続して作った部品のことを指しています。つまり、半導体と一般的に呼ばれているのは、「半導体で作った集積回路」のことなのです。

半導体製品は、いくつかの種類に分けることができます。

まず、NANDフラッシュです。パソコンのハードディスク・ドライブに替わって普及してきたSSDに搭載されている半導体メモリで、人間の脳に例えるならば、長期記憶に相当する役割を担っており、パソコンの電源を切っても、記録された内容は長期間消えることがありません。

次に、DRAMです。これも半導体メモリですが、NANDフラッシュとは異なり、高速に読み書きができる一方で、電源を切れば記録内容が消えてしまうという特徴があります。そのため、人間の脳でいえば、短期記憶に相当する役割を担っています。

それからプロセッサです。MPUとかCPUとも呼ばれ、メモリから受け取った情報を演算処理します。人間の脳でいえば「考える」役割を担います。

アナログICという分類もあります。1と0の羅列で表されるデジタル信号ではなく、連続的なアナログ信号を扱う半導体集積回路です。アナログ信号をデジタル信号に変換するADコンバーターや、逆にデジタル信号をアナログ信号に変換するDAコンバーター、交流を直流に変えたり電圧を下げるなどするパワー半導体などがこれにあたります。

以上はいずれも半導体で作った集積回路ですが、集積回路以外の半導体製品としては、まずイメージセンサを挙げることができるでしょう。レンズから入った光を電気信号に変換する、人間でいえば網膜の役割を担う半導体製品です。

LEDも集積回路以外の半導体製品です。LEDは、順方向に電圧を加えると発光する半導体材料が使われています。

もちろんトランジスタやダイオードも、集積回路ではない半導体製品で、これらは、「別々の」という意味のディスクリートと呼ばれます。

それから、メモリやプロセッサ、アナログIC、イメージセンサなど、複数の半導体部品を一個のチップのうえにまとめて搭載したSoCという半導体製品もあります。ほぼ同じ意味で、システムLSIと呼ばれることもあります。

同様に複数の半導体部品をひとつのチップのうえに搭載しているけれども、比較的集積度が低いものはマイコンと呼ばれます。SoCがスマートフォンのような、演算機能が中心の高度な機器で使用されるのに対し、マイコンは冷蔵庫や炊飯器など、制御機能が中心の比較的シンプルな機器で使用されています。

世界の半導体市場の動向をまとめた世界半導体取引統計(WSTS)によると、2020年の半導体の製品別出荷額はグラフのようになります。

半導体製品の出荷額のうち、集積回路の出荷額が大半を占めていること、なかでも、スマートフォンに搭載されるSoCとメモリで、全体の過半を占めていることなどがわかります。


半導体の製造工程

半導体製品の製造工程は、「設計」、シリコンの板である「ウェハ製造工程」、ウェハの上に回路を形成する「前工程」、そのウェハをチップに切り出す「後工程」の四段階に分けることができます。

設計では、トランジスタや配線の回路パターンの図面を作り、それをガラスの板の表面に、実際の回路よりも大きな回路パターンを描いて、フォトマスクと呼ばれる原版を作成します。

シリコンウェハ製造工程では、シリコンの塊であるシリコンインゴットを薄くスライスしてウェハを作り、ウェハを研磨剤を使って鏡のように磨きます。

前行程は、表面を酸化させたウェハの上に、配線やトランジスタなどになる薄い膜を付着する「成膜」、薄い膜の上にフォトレジストという感光剤を塗って、設計段階で作成されたフォトマスクに描かれた回路パターンから縮小レンズで縮小された回路パターンで露光して現像する「パターン転写」、回路パターンが現像されたフォトレジストをマスクにして、不要な部分を削り取り、薄膜を配線等の形に加工する、「エッチング」、半導体の電気的特性を変化させる「イオン注入」と進みます。

成膜、パターン転写、エッチング、イオン注入に加え、洗浄やウェハの表面を研磨して凸凹をなくす工程を何回か繰り返し、ウェハを何層にも積み重ねていきます。

そして、チップに電流を流すための電極を埋め込み、検査を経て、後工程へ進みます。

後工程は、ウェハをダイヤモンドブレードで小さく切り分けてチップにする「ダイシング」、チップを所定の位置に金属等で接続して固定し、腐食を避けるために樹脂などで封入する「パッケージング」、「最終検査」というプロセスになります。


半導体製造企業

グラフは、世界の半導体製造企業の出荷額のシェアを示したものです。

このうちのシェア2位のサムスン電子や3位のSKハイニックス、3位のマイクロン・テクノロジーはいずれもメモリーの製造を中心に行っています。

そのメモリーを、DRAMとNANDフラッシュとに分けてそれぞれみてみると、DRAM、NANDフラッシュのいずれにおいてもサムスン電子が1位で、40%前後のシェアをもっています。SKハイニックスも含めると、DRAMでは実に70%超、NANDフラッシュでも45%を韓国企業が占めており、この分野での韓国企業の強さが際立っています。

NANDフラッシュで第2位のキオクシアは、東芝が半導体部門を分社化し、アメリカの投資会社やSKハイニックスなどの出資を得て設立された会社です。

それからマイクロン・テクノロジーの子会社にマイクロンメモリジャパンという会社があるのですが、これは、NECと日立と三菱電機のDRAM事業が統合されて設立され、のちに破綻したエルピーダメモリを、マイクロン・テクノロジーが買収して設立した会社です。

半導体出荷額第1位のインテルの他、第5位のブロードコム、第6位のクアルコム、そして10位のアップルは、プロセッサの製造が中心です。

「インテル入ってる」のCMでおねじみのインテルは、長く半導体出荷額ランキング一位の座に君臨してきましたが、次の章でお話しするように、2017年から2018年にかけて、サムスン電子が得意とするメモリの出荷が急増したため、サムスン電子の後塵を配することとなりました。しかし2019年に、ブームの反動でメモリの出荷が大きく落ち込んだため、インテルが1位に 返り咲きました。

出荷額ランキングのベストテンには入っていませんが、プロセッサの製造企業としては、アメリカのエヌビディアが有名です。エヌビディアは、画像処理半導体、GPUの大手で、大量の計算を得意とするGPUの技術が人工知能の分野に転用できることから、AIや自動運転の分野でこのところ急成長しています。

それから、アメリカのアドバンスト・マイクロ・デバイス、AMDも、売上高はインテルの10分の1にも満たないものの、比較的安価で高性能のパソコンを販売していることから、知名度が高いCPUメーカーです。

プロセッサ製造の大手はアメリカの企業がほとんどですが、台湾のメディアテックはスマホ向けのCPUなどの製造で売上を伸ばしています。

メモリやプロセッサ以外の半導体製品中心に製造する企業のうち、アメリカのテキサス・インスツルメンツは、アナログ半導体の最大手です。

スイスのSTマイクロ・エレクトロニクスはマイコンの大手で、MEMSセンサや各種車載部品など、幅広い製品群を有しています。

オランダのNXPセミコンダクターズは、家電大手のフィリップスから分社化した会社です。マイコン製造で世界2位の大手で、ディスクリート製品なども生産しています。

半導体製品出荷額ランキングのベストテンではありませんが、マイコンやイメージセンサなどでは日本企業の善戦がめだちます。

自動車に搭載されるマイコンの生産で世界首位のルネサスエレクトロニクスは、三菱電機と日立から分社化したルネサステクノロジーと、NECから分社化したNECエレクトロニクスが経営統合して2010年に設立された会社です。

ソニーは、イメージセンサの生産で、世界で50%を超える圧倒的シェアを有しています。

画像処理や通信関連のシステムLSIを製造するソシオネクストは、富士通セミコンダクターとパナソニックのLSI事業を統合して2015年に設立された会社です。

インテルやサムスン電子、メモリの各メーカー、多くの日系メーカーは、自社で設計から製造までおこなっていますが、プロセッサ等の製造では設計と製造を分業する場合が多くなっています。

工場を持たずに設計を専門に行う企業をファブレスといい、クアルコム、ブロードコム、アップル、エヌビディア、AMDといった企業はみなファブレス企業です。一方、製造を専門に行う企業をファウンドリといいます。

半導体メーカーには、半導体製品の製造には巨額の設備投資が必要となるため、自社は設計に特化し、製造を外注することにメリットがあります。とはいえ、設計から製造までをおこなっている企業に外注すると、技術が流出してしまう恐れがあります。そこで、他社の外注を受けて製造に特化する、ファウンドリに製造を委託するケースが増えていきました。

ファウンドリの代表格が台湾のTSMCです。

TSMCは、世界のファブレス企業の製造を一手に引き受けることで、世界で最高水準の製造技術を身に着けていきました。半導体製品の性能は回路の線の幅を細くすればするほど性能が高まりますが、TSMCは他のどの企業もまねができない、5ナノメートルの製造を実現しています。

最先端の技術を競っているプロセッサなどの製造メーカーにとって、TSMCは今や欠かせない存在となっており、クアルコム、アップル、エヌビディア、AMD等がTSMCに5ナノメートル半導体の製造を委託しています。自社で設計から製造までおこなっているインテルも、自社での微細化が思うように進んでいないことから、一部のCPUの製造をTSMCに委託しています。

半導体は産業のコメとも呼ばれますが、社会にとってなくてはならない存在となっているTSMCは急成長しており、その株式時価総額は約60兆円に達し、トヨタ自動車の約2倍、世界の企業のなかでベスト15に入る超巨大企業となっています。

半導体関連の企業としては、他にも多数の半導体製造設備を生産する企業があります。

グラフは、そのうちの前工程の製造設備生産企業の出荷額のシェアを示したものです。

これによると、半導体製造設備の生産では、多数の日本企業が上位に入っています。

首位のアプライド・マテリアルズは、半導体製造プロセスのほぼ全ての設備の販売を行うアメリカ企業です。2013年には東京エレクトロンを買収しようとしましたが、アメリカ司法省の承認が得られず断念ました。

第2位のASMLはオランダの企業で、露光装置の販売が中心ですが、売上高では首位のアプライド・マテリアルズに迫る巨人です。

第3位のラムリサーチは、成膜装置やエッチング装置等を販売するアメリカ企業です。

そして日本の東京エレクトロンが第4位です。成膜装置、感光剤塗布現像装置、エッチング装置などを販売しています。

以下、日本の半導体製造設備製造企業を簡単にご紹介すると、スクリーンホールディングスはウェハの洗浄装置で断トツ世界トップのシェアをもっています。

日立ハイテクは、エッチング装置や計測装置を販売しています。

搬送・保管システムで世界トップクラスのダイフクは、半導体のクリーンルーム向けの搬送・保管システムも提供しています。

元々はカメラメーカーであるニコンやキャノンは、半導体露光装置も手掛けています。

アドバンテストは、メモリ検査に強みをもつ、半導体検査装置の大手企業です。

村田機械は、半導体のクリーンルームのファクトリー・オートメーションシステムも販売していますです。

ディスコは、前工程の最後にウェハの裏面を磨いたりする装置や、後工程でウェハを切り分けする装置などで60〜80%の高いマーケットシェアを有しています。

コクサイ・エレクトリックは、日立系列の会社の成膜装置事業が分社化して誕生した会社です。アプライドマテリアルが買収する計画がありましたが、中国当局からの承認が得られず、断念しました。

 


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