一触即発!ロシアのウクライナ侵攻〜コーヒーブレイクしながらわかる
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1. ウクライナとロシアの関係の歴史
黒海の北岸に位置するウクライナは、もともとソビエト連邦の構成国で、1991年のソ連崩壊に伴い独立した国です。
ウクライナには主にロシア語を話すという人もおり、東部の一部、特にクリミア半島は、ロシア系住民が多数を占めています。ロシアとウクライナは民族、宗教、言語のいずれにおいても非常に近く、つまり両国は兄弟のような関係ということができます。しかしこの兄弟は、近年あまり仲がよくありません。
兄弟の関係に深い亀裂が入ったのは、オレンジ革命と呼ばれる民主化運動が起きたときでした。2004年の大統領選挙で、与党で、親ロシア派のヤヌコーヴィッチ氏の当選が発表されると、野党で、ヨーロッパへの帰属をとなえるユシチェンコ氏の支持層が、選挙に不正があったとして、ストライキなどの抗議活動を行いました。その結果、再投票が行われて、親欧米派の・ユシチェンコ大統領が誕生しました。
2010年の大統領選挙で、ヤヌコーヴィチ氏が当選して、親ロシア政権が復活するのですが、ヤヌコーヴィチ大統領がEU加盟を見送ったことに親欧米派が怒り、2014年に親ロシア政権を倒しました
すると、ロシア系住民が多いクリミア半島の人々がウクライナからの独立とロシアへの編入を掲げ、ロシアの支援のもとで住民投票を実施し、ロシア編入を決めました。住民投票の結果を受けてロシアは、国際法違反であるとの国際社会からの強い非難にも関わらず、クリミアの併合を強行しました。いわゆるウクライナ危機です。
ウクライナの東部でも、ロシアの支援を受けた武装組織とウクライナ政府軍との戦闘が起き、泥沼化していきます。ドネツク州とルガンスク州の一部は、ロシアへの編入を求める分離独立派が支配し、ウクライナ政府の管轄が及ばない地域となりました。2015年2月にウクライナとロシアの間で停戦合意が成立します。いわゆる「ミンスク合意」です。しかしその後も戦いはやまず、これらの戦闘による犠牲者は14000人にのぼるといわれます。
2019年5月に、ゼレンスキー大統領が就任すると、ウクライナ政府と親ロシア・分離派、ロシア政府との間で、親ロシア・分離派が実効支配する地域に「特別な地位」を付与するとの基本合意がなされました。2020年7月にはウクライナ・ロシア両政府、停戦を監視する欧州・安保・協力機構などが合意した・完全停戦が発効しました。ところが、和平案は未だ実行されておらず、2021年には再び戦闘が行われるようになってしまっています。
2. ウクライナ侵攻の理由
ロシアがウクライナに侵攻しようとする理由は、まず、ウクライナのNATO加盟を阻止するということです。NATOは、ソ連など・共産主義国に対抗するための軍事同盟で、当初加盟国は12カ国でしたが、近年は東欧諸国の加盟が進み、加盟国は30カ国となっています
ロシアは、NATOが東へ東へと加盟国を増やし、自国の国境のすぐそばまで来ている状況を危険視しています。ウクライナは2019年2月に憲法を改正して、EU加盟と・NATO加盟を目指す方針を明記しました。ゼレンスキー大統領もNATO加盟を望む発言を行なっています。一方でNATOの側も、2008年にNATO首脳会議でウクライナの将来的な加盟を認めています。
ロシアにとっては、ウクライナのNATO加盟は、敵との間で緩衝地帯となっている国が・敵方に寝返ってしまうことを意味し、なんとしても阻止しなければならないことなのです。ロシアは、ウクライナの将来的なNATO加盟を認めた2008年の決定を取り消すよう求めています。
つぎに、ウクライナ東部の親ロシア地域の・独立的な地位を・確立するということです。2014年のミンスク合意では、ウクライナ政府は親ロシア・分離派が支配する地域に特別な地位を付与する、との約束をしていますが、ロシアは、この約束が未だ果たされていないとしています。
特別な地位を付与するには憲法の改正が必要となりますし、ミンスク合意では、親ロシア派が実効支配する地域の指導者らと協議・合意が必要とされており、双方が納得のいく形での合意成立は非常に困難です。そのうえ、特別な地位を付与する地域の範囲が定まっていないことが話を難しくしています。
分離派はドネツク、ルガンスク両州の全域と主張してますが、その場合、ウクライナ政府は、現在も実効支配している、両州の半分余りの地域も手放すことになってしまいます。
ウクライナ政府は、特別な地位の付与に関する法律を制定しましたが、分離派との事前の協議がなかったことから、ロシア側はそれを受け入れられないとしています。
軍事侵攻の大義名分、もしくは口実として、自国民の保護、ということが主張されるかもしれません。ウクライナ・東部地域の住民のうち・約70万人が・ロシアのパスポートを発給されている模様で、これらの人々の安全と権利を確保することが軍事侵攻の目的である、とされる可能性もあります。
それから、そもそもプーチン大統領が・ウクライナはロシアの一部であるという発想を持っている、ということを挙げることができるでしょう。2021年7月、プーチン大統領は、「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」と題する論文を発表しました。同論文は、歴史的にロシア人とウクライナ人は一つの民族だったと主張しています。
一つの民族なのだから・本来は一つの国であるべきなのに、両者の間には国境があり、そのうえ親欧米的な政権が維持されており、さらに・NATO加盟が実現すれば、軍事的にロシアの敵となる。そのようなことは到底容認できない、とプーチン大統領は考えていると思われます。
そしてもし、プーチン大統領のこのような発想が、ロシアのウクライナ侵攻の主因だとすると、問題が容易に終結することはなく、長期にわたって続き、ロシアの行為を・容認できない欧米諸国との間で泥沼化する可能性が低くありません。
2. 親露分離派支配地域の国家承認と派兵指示 (2022/2/22追記)
冬季北京オリンピックの閉幕を・待っていたかのように、2022年2月22日に至り・大きな動きがありました。
プーチン大統領は、「ドネツク・人民共和国」と「ルガンスク・人民共和国」の独立を承認する大統領令に署名し、あわせてロシアと両共和国との・友好・協力・相互・援助条約に署名しました。そして、ロシア国防省に対して、両・共和国に軍の部隊を派遣して、平和を維持するよう指示しました。
両国は、2014年に親ロシア・分離派が、ドネツク州、ルガンスク州で、住民投票の結果を根拠にして独立を宣言し、設立された国ですが、独立を承認する国はなく、後ろ盾となったロシアも独立承認を控えてきたため、国際法上は国家として認められていませんでした。
プーチン大統領は、国家承認により、両国と締結した安全保障条約に基づいて・両国を・ウクライナ、もしくはNATOによる侵略から守る、という建前をとったのです。
この動きに対して、日本を含む各国が国際法違反であるとして、ロシアを非難しました。1928年にパリで不戦条約が締結され、それ以前は戦争は「国権の発動」とされていましたが、それ以降は「犯罪行為」であると位置付けられています。2014年のロシアによるクリミア併合も、ロシアは住民投票の結果を受けた軍の侵攻との建前を取りましたが、各国は、国連軍以外による軍事侵攻を、国際法違反とみなしました。
とはいえ、不戦条約に基づけば、欧米諸国は、対抗して軍を投入することはできず、ロシアは国連安全保障理事会の常任理事国ですから、国連軍を組成することもできません。
それゆえ、経済制裁で対抗することになります。アメリカのバイデン大統領は、即日で、親ロシア・分離派支配地域でのアメリカ国民による新たな投資、貿易、金融取引を禁じる経済制裁を発動する大統領令に署名し、22日中にもロシアに対する経済制裁を発表するとしました。EUもロシアに対する経済制裁発動の意向を示しています。
Some clues...
省略(動画本編でご覧ください)