本作をお読みいただく前に
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本作をお読みいただく前に

「上海エイレーネー」=上海の平和の女神。すなわち本作は、上海を舞台とした平和の物語です。

本作の主人公は実在の女性、鄭蘋如をモデルとしています。鄭蘋如は複数人の回想録にも「絶世の美人」「これほどの美人はいまだに見たことがない」などと記述されている女性で、日本軍により設立された特務機関のトップ暗殺に加わったことや近衛文麿の長男と交際していたことなどから、過去の小説や映画において、ハニー・トラップをも辞さないしたたかな人物として描かれてきました。それらは戦後まもない頃の断片的な資料に依っていることが多いのですが、最新の資料や証言をも加えて読み解けば、別の彼女の姿が見えてきます。そこで本作では、彼女を日中両国の狭間で悩み苦しみ、両国間の平和を希求する女性と捉えて、暗殺に加わった理由などについて仮説を加えつつ、より素顔に近い彼女を描くことを試みています。

「和平」は、本作のもうひとつの主人公です。日中戦争は、残忍な戦闘も行われる一方で、和平に向けた活動が積極的になされ、それも同時に複数の工作が進行するという、特異とも言える紛争でした。軍人、外交官、民間人など各方面の人々が参画する和平活動は、やがて蒋介石との直接和平を目指す派と、汪兆銘による政権を立ち上げその政権と和平を実現し戦争を終結させようとする派とが激しく対立するようになります。本作ではその対立を中心に据えつつ、和平仲介のために南京-上海間を移動中の英国大使が謎の航空機に襲撃された事件や、暗殺者に狙われる汪兆銘を民間人に扮した陸軍大佐がハノイにまで救出に向かったことなど、歴史的ドラマをも交えて和平活動を描いていきます。


16世紀の広西壮族のスーパーヒロイン瓦氏夫人をモデルとして描く大河小説。
2021年12月28日第2版発行



技術の進歩が社会にもたらす不可思議を描くショートショート8本。
2019年6月17日刊行



近代外交経済小説の表題作および『ステーツマン』『上海ノース・ステーション』の三篇を収録
2017年5月15日刊行



連作『倭寇の海』第一弾。嘉靖大倭寇に最初に挑んだ英傑、朱紈の物語。東洋一の密貿易基地で海賊の巣窟、双嶼を攻略する……
2016年2月18日刊行



キャンパスの花は魔性の間諜か?平和の女神か?
2014年1月18日刊行



天才エコノミストが通貨の力で戦争を戦い、通貨の力で戦争を終わらせる……

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