シャングリ・ラのバンヤンツリー。ちょっと神秘的な響きではある。
シャングリラ(香格里拉)県は雲南省の元は迪慶チベット族自治州の中心エリアで以前は中甸と呼ばれた。それがどうして桃源郷を意味するシャングリ・ラと呼ばれるようになったかについては「中国旅行記-SHANGRI-LAへ」の中で詳しく書かれているのでそちらをご覧いただきたい。標高3000メートル超で、一言でここを表現すれば「緑のチベット」。あちらこちらにチベット仏教の塔がたち、日に焼けたチベット族の民族衣装のおばあさんが行き交うのは同じだが、本家のチベットは乾燥地帯であるのに対し、ここは広い谷に緑の草原が広がり、ヤクや牛、馬、羊などの放牧が行われ、無数の小川に沿って住宅が散在している。
バンヤンツリー(Banyan Tree)はプーケット、モルジブ、ビンタン、セイシェル、上海、宮崎などにチェーン展開するスパ・リゾート。上海のスパについては「お父さんへのスパの勧め」の回にも書いた。
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谷の中に作られたリゾートは、
古いチベット住宅をそのまま使用している |
このリゾートは、シャングリラ県の中心市街地から結構離れたところにある。この不便さがまた神秘的な雰囲気を高めてくれる。悪路を数十分走り「いったいどこまで入っていくんだろう」と不安になりかけた頃に車が止まった。立派な門ときれいなアクセスロードがあるものと思っていたがそのようなものは何もない。リゾートの外観が周辺の建物と調和しているので、自分が目的地に近づいていることにすら気づかなかった。フロントのある建物も、客室の建物も、全て古いチベット住宅を移築しリノベートしたものだそうだ。遠目にはそこが高級リゾートであることなど分かりようがない。
部屋に足を踏み入れた時、思わず「お~、すごい」とうなってしまった。木製の床、壁、天井はいずれも相当に古く、部屋には木製のアンティックな家具が置かれている。なにしろ部屋が広い。泊まったのは上の写真の下から3番目の建物だが、その中に客室は二つしかない。入り口は2階の川の側(上の写真の右側)にあり、2階はベット、デスク、ソファなどが置かれる居住スペース、1階はバス、トイレ、洗面などのスペースとなっている。
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2階。力いっぱいアンティックだが、ブロードバンド回線やDVD機、オーディオセットもある。 |
1階。このバスタブ、デカすぎてお湯を張るのに時間がかかり過ぎ。 |
滞在中、サービスで注文をつける点がいくつかあった。部屋のエアコンが動かない、スパの部屋がちょっと涼しすぎる、朝食がオーダー後20分たっても運ばれてこない、コーヒーがカップの底が見えるくらい薄い、等々。聞けば9月1日にオープンしたばかりで(小生の滞在が9月11日~。日本人の最初の客だそうだ)、そのためまだスタッフが不慣れなのだろう。しかし全ての注文に迅速に対応してくれたのがうれしかった。部屋のエアコンの修理はまあ当然として、翌日訪れたスパでは事前に部屋が十分に暖めてあり、朝食は翌朝からビュッフェが導入され、コーヒーはマシンを調整し試行錯誤してみたそうだ。問題点をスタッフの誰かに伝えておくと、改善の上、夕食時などにマネジャーが謝罪と事情の説明にきてくれる。
ここでのサービスは他のホテルとは異なる。スタッフは事務的ではない。静かなやさしい話し方、ゆったりとした身のこなし、すれ違った時の満面の笑顔での挨拶等々。だから、当方も「抗議」として問題点を指摘するというより、ここのサービス向上に貢献するためという気分になってくる。
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息も苦しく、馬に乗らねばとても
たどり着けないような山頂への
トレッキング |
スパはセラピストがタイから来ており、至福のトリートメントを受けることができる。日中はいくつかのトレッキングコースが用意されている。実際に参加してみたのは、徒歩で仏教の塔・寺院とまわったあと、馬で山に登り、海抜3600メートル超にある草原でランチ。そして一部馬に乗りつつ戻る全約6時間の行程。ランチは、車も入れないような場所なのに、ウェイターのおにいちゃんがおり、サンドウィッチの他、暖かいカボチャスープ、パスタ、ご飯、コーヒー等が出され、ちょっと驚いた。おそらく我々に先行して馬か水牛の背中に載せて持ってきたのだろう。
ちなみにここは中国移動の携帯電話は通じない。中国沿海都市の騒音と工事現場の粉塵と原因不明の異臭にくたびれたら、しばし「永遠、透明、平和が支配する草原」のシャングリ・ラのバンヤンツリーに逃避してみてほしい。
(2005年9月記)
DATA
バンヤン・ツリー・リンガー
悦榕仁安蔵村
BANYAN TREE RINGHA
住所:雲南省迪慶蔵族自治州香格里拉県建塘鎮紅坡村
電話:(0887)8288822
FAX:(0887)8288911
URL:http://www.banyantree.com
2005年9月現在日本人スタッフも常駐している。
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